昔は「脳の唯一のエネルギー源はブドウ糖」と信じられていた
ひと昔前までは「脳の唯一のエネルギー源はブドウ糖です、だから脳のためにしっかりと糖分を補給しなければいけません」と言われていました。
これを信じて甘いものを食べまくった結果、受験が終わったらかなり太ってしまったという方もいらっしゃるはず…いかがですか!?
でも残念ながら「脳の唯一のエネルギー源はブドウ糖だ」というのは事実ではないことが分かってきました。
正確に言えば「グリア細胞たちの唯一のエネルギー源はブドウ糖だが、ニューロンはケトン体や乳酸をエネルギーにする」ということになります。
ニューロンは脳を構成する神経細胞で、ニューロン同士がいわば手をつないでいるような感じです。しっかり手をつないでニューロンからニューロンへ信号が素早く伝わる人が「頭の回転の速い人」なのですね。
いっぽう、グリア細胞にはいろいろな形があり、それぞれ様々な役割を果たしています。まだ解明されていない部分もありますが、グリア細胞はニューロンに栄養を渡したり手助けをしています。
「で、でもっ!グリア細胞はやっぱりブドウ糖しか使えないんじゃないかっっ!」と思った人のために今回の記事を書きました。どうぞ最後までお付き合いくださいね♪
グリア細胞が使うブドウ糖ぐらい、糖新生で確保できるのではありませんか?
そりゃそうよね。そうでなきゃ私なんてとっくに低血糖で死んでいるはずよ💦筋トレやジョギングまでしているんだけど…
正常血糖値ならグリア細胞はブドウ糖不足にはならない
上のイラストでお星さまみたいなグリア細胞(アストロサイトちゃん…脳を有害物質から守る血液脳関門を作ったり、ニューロンに栄養をあげたり手助けをする)に注目してください。
アストロサイトちゃんは「私たちは脳の血管からブドウ糖を取り入れて利用しています」と語っています。これはどういうことでしょうか?
「血糖値」は、血液1dL中にブドウ糖が何mg
言い換えると、血液中にこのぐらいの量のブドウ糖があれば脳のグリア細胞のエネルギー確保にも何の問題もないわけです。
糖尿病ではない健康な人は、何をどれだけ食べても血糖値が200とかそれ以上になることはめったにありません。※普段糖質制限をしている人が久しぶりに大量に糖質を食べると、準備ができてなくてそうなっちゃうことはありますが糖尿病になったわけではありません💦
健康な人が糖質をたくさん食べても血糖値が一定以上に上がらないようになっているのは、血糖値が上がり過ぎることは体にとって危険だからです。
つまり血糖は「たくさんあればあるほど良い」という類のものではなく、多すぎても少なすぎてもどちらも良くないのですね。
健康な方が正しい糖質制限をした場合、肝臓で「糖新生」が行われるので低血糖になることはありません。つまり血糖値も正常値に保たれるのでグリア細胞には何の悪影響もありません。
高齢の糖尿病患者さんが夜間などに重症の低血糖を何度も繰り返すと認知症が進行しやすいことがすでに分かっております。
重症の低血糖が起こる原因は、インスリン注射の量が食事に対して多すぎた時やある種の糖尿病薬が効きすぎた時です。
脳への悪影響を心配するのであれば、糖質制限することよりもむしろ「たっぷり糖質を摂取して薬やインスリンを使うことにより重い低血糖を起こすこと」のほうを心配しなければね。
ニューロンはケトン体がお好き♪
ニューロン君はケトン体や乳酸をエネルギーとして使うことができます。乳酸は、アストロサイトちゃんがブドウ糖を代謝して作り出したものです。
「てんかん」の患者さんの場合、ニューロンがなるべく乳酸ではなくケトン体をエネルギーとして使うようにしてやることで発作が起こりにくくなります。
またアルツハイマー型認知症の患者さんでは脳のブドウ糖の取り込みが低下しているので、代わりにケトン体を増やすことで脳の機能の衰えを防ぐ効果があると考えられるそうです。
正しい糖質制限を行うと低血糖にはならないのでグリア細胞ちゃんたちも何も困らないうえ、ニューロン君たちもケトン体をたくさん使えて大喜び…といったところでしょうか。
やっぱりそうなんですね!安心しました。
糖質制限しても低血糖にならないのなら何も問題はないわ。