このブログでは「ケトン体」の凄さについてさんざん語っていますが「でっでも!人間はケトン体だけで生きていくことはできないだろう!?」と思われる方も当然いらっしゃると思います。
この記事、6/14にタイトルだけ書いて下書き保存してすっかり忘れてしまっていたんですが、昨日ふっと思い出しまして。
結論から書くと「ヒトはケトン体だけで生きるにあらず」です。「ケトン体も使うことによってよりよく生きる」と言うべきか。
まず人体には脳のグリア細胞(ニューロンはそうではない)や赤血球のように「ブドウ糖しかエネルギーとして使えない者」が存在します。
ブドウ糖しか使えないグリア細胞や赤血球のために正常血糖値を維持しなければいけないのは極めて当たり前のことですよね。
しかし外部からの糖質の経口摂取にだけ頼っていると、血糖値は上がりすぎたり、ちょっと食事できないと逆に下がりすぎてとても不安定で危険です。
糖尿病ではない方ならインスリンが十分に出ますから食後高血糖は抑えられても、低血糖は怖いですもんね!
血糖値を乱高下させずに常に一定範囲内で保つために「糖新生」といって肝臓などで糖以外の材料から糖を作り出す仕組みが重要なのですね。
ちょっと上の図を見てください。大学時代に生化学が大嫌いだった私が誰にでも分かるように…と以前作成した図です。
中性脂肪が分解される、いわゆる「体脂肪が燃える」時などがこれに当たりますが、グリセロールは糖新生に回されて脂肪酸はそのまま使われたりケトン体になったりします。
そして常時糖質をたっぷり食べている場合は食後に一時的に糖新生はストップしますが、寝る直前に食事をしないかぎり深夜にはやはり糖新生が行われています。
夕食後何も食べていないのに明け方にかけて血糖値がやや上昇するのは、朝の活動に備えて血糖値を上げるホルモンが分泌されて肝臓で糖新生やグリコーゲン(体内に貯めてある糖)が分解されて血液中に放出されるからです。
糖尿病患者では必要以上に糖新生が活発になっていることも多く、そのために空腹時血糖値が高くなるのは実に困ったことですが、糖新生自体はとても重要な働きなのです。
正常血糖を維持するために「糖新生」はどうしても必要な働きで、ヒトはケトン体「だけ」で生きていくことはできません。
ケトン体しか使わないのではなくケトン体「も」使うことで、数時間おきにお菓子やパンなどを食べなくてもヒトは元気に活動できるわけです。
管理栄養士の麻生れいみ先生によれば『いつも糖質をお腹いっぱい食べてきた方はケトン体回路を使ったことがなく、さび付いている可能性がある』そうです。
山で遭難した時など、今まで使ったことがないケトン体回路を急にスムーズに回せと言われても困ってしまいますよね…
ごく稀ですが、生まれつきケトン体をまったく利用できない方もいらっしゃいます。その場合は医師の指示を守ってください。
糖質を常にたっぷり食べている状態ではケトン体は出てきません。ヒトにとって食事に依存せずに常に血糖値を安定させるために「糖新生」はとても重要な働きで、さまざまな健康への良い効果が期待される「ケトン体」も自由に使える状態にしておくことが大事ではないでしょうか。
ネコは糖質を食べなくても糖新生で血糖値をキープしているんだニャー!
糖新生があるから、寝る前に何も食べなくても平気なのよね。