緩やかな糖質制限ならいいけれど、極端な糖質制限は危険?
よく「緩やかな糖質制限ならいいけれど、極端な糖質制限は健康上危険です!」という専門家の方たちの意見を目にします。
なるほど確かにもっともらしく聞こえるんですけど、じゃあその「根拠」は何?と探してもよく分からなかったり明らかに間違いであることが多々あるんです。
最近びっくりしたのが「ケトン体が増えると嘔吐、昏睡状態になり死亡する可能性も…」管理栄養士さん、もしかして糖尿病性ケトアシドーシスと間違えていませんか!?
健康な方の場合、糖質制限をしてケトン体が増えるのは当然のことです。糖質がほとんど外部から入ってこないので、「糖新生」および脂肪酸エネルギーとケトン体エネルギーが作られるのです。
で、健康な方の場合「極端な糖質制限」を行ってもケトン体がどんどん増加してケトアシドーシスになることはまずありません。
私は5年前に糖尿病性ケトアシドーシスになりましたけど、当時「糖質制限」はまったくしていませんでした。果物や某乳酸菌飲料になぜかはまり、それらを明らかに摂取しすぎていた+風邪で寝込んだ時に起こりました。
糖尿病性ケトアシドーシスでは何らかの理由により「インスリンがほとんど作用しない状態」となり、血糖はあふれていても体はそれをエネルギーとして一切利用できなくなるために起こります。
1型糖尿病の方がインスリンを打ち忘れた時や、私のように2型糖尿病患者が糖質を慢性的に摂り過ぎていてすい臓のβ細胞が極度に疲弊した状態になったときにそうなる危険性があります。
そうではない健康な状態ではケトン体が増えてもその増え方には限度がありますし、呼吸によって調整が行われるので血液が酸性に傾くこともありません。
血液が酸性に傾くと言うのは、とてもヤバいことなんですよ!!「肉を食べると血液が酸性になる」などと得意げに語る専門家もいますが、それが本当なら肉好きの人はみんな死んでしまいます。ライオンは?野良猫は??
血液のpHは、非常に狭い範囲内でキープされています、そうじゃないと死亡する危険性があるからです。糖尿病性ケトアシドーシスは重要なホルモンであるインスリンが働かないためにその調整の仕組みが追い付かずに死亡することすらある危険な病態です。
ほぇー…ケトン体が増えることとケトアシドーシスはかなり違いますね。
健康な方が糖質制限をしてケトアシドーシスになるなら、私たちはとっくに生きていないはずでしょう?
「極端」なのはどっちでしょうか
「極端」と言われると、何やらマイナスのイメージがつきまといます。「極端な糖質制限」よりは「緩やかな糖質制限」のほうがなんだか健康に良さそうな気がしませんか?
でもね、これって言葉のマジックだと思うんです。ちょっと考えてみてほしいんですけど、「糖質」を「ニコチン」または「アルコール」に置き換えてみるとどうなるでしょう?
・極端なニコチン制限…スパッとタバコをやめてしまう。1本も吸わない。
・緩やかなニコチン制限…完全にやめるのは辛いから1日3本だけは吸ってもいい。
・極端なアルコール制限…お酒を1滴も飲まない。
・緩やかなアルコール制限…量を減らして飲むか、アルコール度数が低いお酒にチェンジする。
…どうですか?確かに「緩やかな制限」のほうがラクで継続しやすい気がしますが、健康上は完全に禁煙or禁酒するほうがずっと良いに決まっているのでは?
そもそも「バランスの良い食事」というのは最近偉い人たちが勝手に決めただけで、特に科学的根拠があるわけではないんです。
日本糖尿病学会の評議員の先生は2015年、医師オンリーの集まりで「昔の日本人の食事の平均がこのぐらいだったのでそう決めただけで、現在指導している食事のバランスに特に科学的根拠はない」とおっしゃいました。
私が20年ぐらい前に大学で勉強した栄養学の各種の教科書にも確かに「ケトン体が出ると危険」だの「バランスが大事」だの書いてあったような気がしますけど、今はもう昔とは違っていろいろなことが分かってきました。
いまだに「脳のエネルギーはブドウ糖だけ」と書き、その誤りを指摘してもあえてそのままでずっと訂正する気がない方たちもいらっしゃいます💦
ほとんど肉だけ食べて問題なく元気に暮らしている野生動物はたくさんいるわけですが、人間だけがそうではなく1日3食たっぷり糖質を摂取しないと死んでしまうかのような誘導がされています。
その根拠も間違っていたり良く分からなかったり…もしかして「売れればいいんだ」って思っている方たちの情報発信にまんまと惑わされていませんか?
砂糖やお米の消費量を拡大させるのが趣旨の団体もありますけど、必ずそういう団体のサイトには「糖質制限は危険」という趣旨の文章が掲載されていますが…
試しにみなさんもそのような団体に「この部分の記述が間違っています」と教えてあげてください。まず訂正などされずに無視されますから💦
「極端な糖質摂取」がもたらしたもの
人類の長い歴史の中で、米や小麦を食べるようになったのはごく最近のことです。大昔の人類は肉食をしていたのは明らかです。
それも、日本で庶民が食べたいだけたっぷりと白米を食べられるようになったのはほんの少し前のことではありませんか。
江戸時代ごろまでは、地方の貧しい農家の方などは「自分で作った米は全部年貢として取られてしまい、自分たちはほとんど食べることができない」なんてことはよくありました。
戦後、どんどん生活が便利になって運動量が減ったにも関わらず、糖質(ことに吸収が非常に速い果糖ブドウ糖液糖入りの清涼飲料水やお菓子、アイスなど)は誰もが大好きです。
肥満や糖尿病だけではなく、ありとあらゆる病気と糖質過剰摂取の間には密接な関係があると考える医師もいらっしゃいます。
ごく最近糖質食べ放題の生活になったばかりなのに、それを基準にしてあたかも「大量に糖質を摂取しなければ病気になる」ということにしてしまったのは誰でしょう?
「極端」なのはどちらなのか、誰の立場で考えるかによってその答えはまったく変わってしまいます。
確かに持病やそれまでの生活によっては、いきなりストイックな糖質制限をすると体調を崩す方もいらっしゃるのは事実なので、体調と相談しながらゆっくり切り替えていくといいでしょう。できれば、糖質制限に詳しい医師の指導を受けられるとさらにいいですね。
みんなが糖質を大量に摂取するようになったので「極端な糖質制限」などと言われてしまうんですね。
そう思うわ。そして「極端な糖質摂取」によって人々は健康になったかどうかを考えてみないといけないわね。